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ポマードとは?意味・種類・歴史がわかる基礎ガイド - Vol.1

KIOSQ Journal/Vol.1|ポマードとは
ポマードとは、髪に強いホールド力とツヤを与え、七三分けやオールバックのように「きっちりまとめるスタイル」をつくりやすい整髪料です。大きく油性水性の2タイプに分かれ、日本では水性タイプが「グリース(ヘアグリース)」と呼ばれています。

はじめてポマードを選ぶ人に向けて、言葉の意味や種類といった基礎から、ワックス・ジェル・グリースとの違い、200年を超える歴史、そして自分に合うタイプの見つけ方まで、順を追って解説します。

ポマードとは? — 定義と語源

ポマードとは、髪に強いホールド力とツヤを与え、コームで端正なスタイルをつくりやすい整髪料の総称です。ヘアジェルのようにパリッと固めきるのではなく、乾いたあとも形を整え直せる可塑性(かそせい)を持つのが特徴。ベースの違いで油性と水性の2タイプがあります。

語源は「リンゴ」

「ポマード(pomade)」という言葉は、フランス語 pommade(16世紀「軟膏」)→イタリア語 pomatapomo=リンゴ)→ラテン語 pomum(果実・リンゴ)と遡ります。その昔、軟膏に香りづけとしてすりつぶしたリンゴを練り込んでいたことに由来する、という説を主要な語源辞典(Merriam-Webster / Etymonline)が支持しています。

油性ポマードと水性ポマードの違い

項目 油性ポマード 水性ポマード(=日本の「グリース」)
主成分 ワセリン・鉱物油・蜜蝋などの油分/ワックス 水・グリセリン・整髪用の成分
ツヤ 強いツヤが長時間持続 処方によりツヤ〜マットまで幅広い
落としやすさ 水に溶けにくくシャンプー数回要ることも 水で洗い流しやすい

優劣ではなく目的で選ぶもの。日本で近年主流なのは、扱いやすい水性(グリース)です。(セット感・直しやすさ・湿気への強さなど、より詳しい比較は下のグリース記事で)

→ グリースの詳しい話(日本と海外で意味が逆になる理由)

Column | 豆知識
日本にもあった「油性」整髪料 — 相撲の鬢付け油
水性ポマード(グリース)が広まる前から、日本には独自の油性整髪料がありました。力士や歌舞伎役者、芸妓が結う日本髪に使う鬢付け油(びんつけあぶら)です。

欧米の油性ポマードが石油系(ワセリン)を主体にするのに対し、鬢付け油は木蝋(もくろう=ハゼの実からとる植物ロウ)に菜種油・ひまし油を合わせた植物性。しかも大銀杏(おおいちょう)の髷を一日じゅう固定するため、ポマードよりずっと硬く作られています。あの独特の甘い香りは、バニラを主体にした香料によるものです。

「油とロウで固める=水では落ちない」という発想は同じでも、原料も硬さも目的もまるで違う——ポマードの遠い親戚のような存在です。
屋外での散髪
かつての散髪風景(Library of Congress・PD)

ポマードの種類(水性の中の3タイプ)

現在主流の水性ポマードは、仕上がりで大きく3つに分けられます。取り扱う製品はすべて水性(成分の第一が水)で、水で洗い流せます。

Type 01
① ジェルグリース系
ツヤと強めの固定
ツヤ強めの固定七三・オールバックスリックバック

水に整髪用のポリマー(乾くと膜になって固める成分)を合わせ、ツヤとしっかりした固定感を出すタイプ。七三・オールバック・スリックバックなど面をタイトにまとめるスタイル向き。

Type 02
② クリーム系
ナチュラルなツヤと扱いやすさ
ナチュラルなツヤ日常使い植物ワックス主体

コメヌカロウやミツロウなど植物由来のワックスを軸にしたタイプ。自然なツヤで、日常使いしやすい。

Type 03
③ マット・クレイ系
ツヤを抑えて束感・動き
マット束感・動きカオリン/ベントナイト配合

カオリンやベントナイトなどのクレイ成分でツヤを抑えるタイプ。マットで自然な質感、束感や動きを出しやすい。

※ここでは成分の傾向(ポリマー=しっかりした皮膜/植物ワックス=ナチュラル/クレイ=マット)で整理しています。各製品のホールドとツヤは5段階で設定されており、比較図鑑で5段階の★付きに見比べられます。

ポマードの歴史 — 衰退から「サードウェーブ」へ

ポマードは200年以上の歴史を持つ整髪料です。時代ごとの流れを追うと、いまの「水性ポマード(グリース)」が主流になった理由が見えてきます。

20世紀前半のバーバーショップ(Harris & Ewing)
20世紀前半のバーバーショップ(Harris & Ewing・Library of Congress・PD)
1930〜40年代のバーバーショップ(FSA/OWI)
1930〜40年代のアメリカのバーバーショップ(FSA/OWI・Library of Congress・PD)
18世紀 — ヨーロッパ
香りづけした軟膏として誕生
ポマードの原型は、18世紀ヨーロッパの香りづけした軟膏。動物性・植物性の脂に、香りづけとしてリンゴなどを練り込んだもので、上流階級がウィッグや髪を整えるのに使いました。「pomade=リンゴ由来の言葉」は、この時代の名残です。
1920〜1950年代 — 黄金期
油性ポマードの大量生産とロックンロール
20世紀前半、ワセリン(石油系)とワックスを主成分にした油性ポマードが大量生産され、広く普及しました。Murray's(1925年・シカゴ創業)Brylcreem(1928年・英国)などが定番となり、ロックンロール時代のツヤのある髪型とともに文化的なピークを迎えます。
1960〜1980年代 — 衰退
新しい整髪料に押される
自然な髪型の流行と、ヘアスプレー・ムース・ジェル・ワックスといった新しい整髪料の登場により、ポマードは若者文化から遠ざかっていきました。
日本 1970年代
水性ポマードの誕生
転機は日本から。東京・文京区の阪本高生堂が1970年代に水溶性の「クールグリース」を開発。油性ポマードの"シャンプーでも落ちにくい"欠点を克服したこの製品が、水性ポマードの先駆けとされ、日本で「グリース=水で落とせる水性タイプ」という認識を広めました。
日本 1990〜2000年代
「カリスマ美容師」ブームとワックスの台頭
1990年代後半、日本では「カリスマ美容師」ブームが起こり、毛束をねじって動きを出すヘアワックスがサロン発信で一気に普及。2000年代にはワックスが整髪料の主役となり、ポマードやグリースは「時代遅れ」として若年層から遠ざかっていきました。
2010年代〜 現在
ポマードのサードウェーブ
コーヒーに「サードウェーブ」があるように、ポマードにも3つの波があります。ファースト(〜1950s:石油系の大量生産品)、セカンド(水溶性技術の確立=日本のクールグリース)、そしてサード(2010年代〜)。サードウェーブは、大手と一線を画す独立系のクラフトブランドが、特定の哲学を軸に少量生産する潮流です。取り扱う4ブランドは、いずれもこのサードウェーブを代表する存在です。

サードウェーブの中の、2つのアプローチ

同じサードウェーブでも、ブランドの打ち出し方は分かれます。私たちは、扱う4ブランドを大きく2つの方向性で捉えています(あくまで私たちの見方で、公式な分類名ではありません)。

① Approach
クリーン&ナチュラル志向
  • 植物由来の成分を軸に
  • 処方開発〜製造まで自社で一貫管理
  • ヴィーガン処方・サステナブルなパッケージ
日本ではまだ数少ない新鮮な選択肢
O'DoudsFIRSTHAND
② Approach
グリース志向
  • クールグリースが拓いた水性ジェルグリースの系譜
  • バーバー向けの高いツヤと固定感
  • 独立系ブランドとしての再解釈
クラシックなツヤと固定
BonafideJS Sloane
なぜ日本では「グリース」と呼ぶ? 海外で "grease" は油性寄りのニュアンスで使われることが多いのに対し、日本では阪本高生堂「クールグリース」の普及により「グリース=水性ポマード」として定着しました。同じ言葉でも国で指すものが逆になります(→ 詳しくはグリースの記事)。

ポマードとワックス・ジェルの違い

ポマードとワックス:ツヤでまとめるのがポマード、マットで毛先を動かすのがワックス。詳しくは→

ポマードとジェル:乾いても整え直せるのがポマード、乾くと固まって直しにくいのがジェル。詳しくは→

セットの原理と、得意なスタイル

仕上がりが違うのは「何で髪をとめるか(セットの原理)」が違うから。原理がわかると、得意なヘアスタイルも見えてきます。

タイプ セットの原理(何で髪をとめる) 得意なヘアスタイル
水性ポマード
(グリース)
乾いた皮膜が髪どうしを接着(接合)し、束ねて固定する 七三・オールバック・スリックバック面をタイトにまとめる・ツヤ
油性ポマード 油分で髪をコーティングし、重みでまとめる(固まらない) ポンパドール・リーゼント濡れツヤ・クラシック
ワックス ワックスの粘りで毛束をまとめる(硬い皮膜は作らない) 無造作ショート・束感毛先を動かす・マット〜ミディアムシャイン
ジェル 乾いた硬い皮膜でガチッと固定する 一日崩さないタイト・立ち上げハイシャイン・強固だが直せない
クレイ 粘土が皮脂を吸い、髪表面にザラつき(摩擦)を作って絡ませる マットな無造作・根元ボリューム束感・パーマ活かし

大きな分かれ目:面をタイトにまとめるならポマード(グリース)・ジェル毛先の動き・束感を出すならワックス・クレイ。さらに「乾いても直せる」のがポマード、「固めて崩さない(直せない)」のがジェルです。

じつは、カテゴリーの境界は曖昧になっている

サードウェーブ以降、ポマード・ワックス・クレイ・ジェルの違いは、製品名やパッケージだけでは見分けにくくなっています。これは海外のグルーミング解説でも指摘されている流れで、理由は主に3つあります。

1
ホールドの強さが重なる
どのカテゴリーにも、弱いものから強いものまであります。つまり"固定力"だけでは分類できません
2
ハイブリッド製品が増えた
「クレイポマード」「マットペースト」「ファイバーポマード」のように、複数のカテゴリーをまたぐ名前の製品が一般的になりました。
3
成分が重なる
いまのポマードは蜜蝋や植物油を使い、水性ポマードはジェルと同じ"乾くと膜になる成分"を、マット系はクレイ成分を含みます。水性ポマード一つをとっても、ツヤ系からマット系まで幅広く、ジェルにもクレイにも重なります
身近な例:O'Douds スタンダードポマード は、質感はワックスに近く、仕上がりはポマードとワックスの"いいとこ取り"のような使い心地。O'Douds スタイリングトリートメント は、バームとポマードの"いいとこ取り"のような使い心地です。——製品そのものが、カテゴリーの垣根をまたいでいます。
だから、こう選ぶのが確実 カテゴリー名にこだわるより、「どんな仕上がりにしたいか(ツヤ/マット)」「固めたいか、あとで整え直したいか」で選ぶのが失敗しません。この記事の"種類"や各"違い"記事も、その軸で整理しています。
※ただし「固まる仕組み」——まとめる(ポマード)/固まる(ジェル)/動かす(ワックス)——は、今も有効な見分け方です。

あなたに合うタイプは?

選び方には2つの入口があります。仕上がり(ツヤ・ホールド)から探すか、髪質・作りたいスタイルから探すか。それぞれ専用の記事が近道です。

選び方の2つの入口
仕上がりで選ぶ ツヤ × ホールドで全製品を俯瞰 → 比較図鑑
髪質・スタイルで選ぶ 直毛/くせ毛・七三/無造作など → 使い方・選び方ガイド

価値観で選ぶ ― 4ブランド

取り扱う4ブランドは、いずれもサードウェーブを代表する独立系。それぞれ大切にする価値観(哲学)が異なります。共感できる考え方から選ぶのも、いい入口です。

クリーン派
O'Douds

O'Douds(オダウズ):2014年ニューヨーク・ブルックリン誕生、現在はテキサス州ヒューストンで自社製造。植物由来の成分を軸に、ヴィーガン処方・動物実験なし。「From the Earth, For the Earth」を掲げるクリーンなグルーミング。

こんな人に|肌や環境にやさしい“中身”から選びたい。自然派・ヴィーガン志向の人へ。

O'Douds の商品を見る →
クラフト派
FIRSTHAND Supply

FIRSTHAND(ファーストハンド):2016年 米マサチューセッツ州ビバリー。処方開発から製造・パッケージまで自社で一貫管理、容器は100%再生樹脂。クレイポマードは米GQ「Best Men's Hair Clay」に選出。

こんな人に|作り手のこだわりとサステナビリティを重視したい。“どう作られたか”で選びたい人へ。

FIRSTHAND の商品を見る →
定番派
Bonafide Pomade

Bonafide(ボナファイド):2012年 カリフォルニア。“bona fide=本物・誠実”を理念に、手の届く価格で確かな品質を。水性ジェルグリースの定番。

こんな人に|まず気軽に、王道の一本から始めたい。信頼された定番から入りたい人へ。

Bonafide の商品を見る →
クラシック派
JS Sloane

JS Sloane(ジェイエススローン):2012年 ニューヨーク。1930〜40年代ハリウッド黄金期をオマージュし、クラシックポマードを水溶性に再処方。

こんな人に|レトロで色気のある“王道のツヤ”が好き。クラシックな雰囲気を出したい人へ。

JS Sloane の商品を見る →

→ 4ブランドの製品を実際に比較する(使い方・選び方ガイド)

よくある質問

ポマード・ワックス・ジェル・グリースは、何がどう違う?
ざっくり言うと、ツヤでまとめるのがポマード、マットで動かすのがワックス、乾いて固まるのがジェル。そして日本で「グリース」と呼ぶのは水性ポマードのことです。それぞれの詳しい違いは各専用記事で解説しています。
サードウェーブポマードとは?
大手と一線を画す独立系のクラフトブランドが、独自の哲学で少量生産する2010年代以降の潮流です。この記事で紹介する4ブランドも、いずれもこの流れにあります。
「ポマード」の語源は?
リンゴです。フランス語pommade→イタリア語pomata(pomo=リンゴ)→ラテン語pomumに由来し、昔の軟膏にリンゴを練り込んでいたことにちなみます。
ポマードは毎日使っても大丈夫?
使った日は、地肌に残さないよう夜のシャンプーで洗い流すのが基本です。水性タイプは水で落ちやすく、日常使いに向きます。清潔に保てば毎日のスタイリングに使えます。
ヘアバーム・ヘアクリームとの違いは?
バームやクリームは全体に軽く、ツヤ控えめで保湿・まとまり重視のものが多い一方、ポマードはセット力とツヤの幅が広く、面をつくる・キープするのが得意です。仕上がりの狙いで使い分けます。
初めてのポマード、油性と水性どっちがいい?
扱いやすさと洗い流しやすさなら水性タイプ(当店で扱うのはすべて水性)。濡れたようなツヤと何度でも直せる感覚を最優先するなら油性です。初めてなら、シャンプーで落とせる水性が安心。仕上がり・髪質からの選び方は使い方・選び方ガイドへ。

あなたに合う一本を見つける

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Vol.2水性ポマードの使い方・選び方
関連記事・比較図鑑

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参考:Merriam-Webster/Etymonline(pomade 語源)、Wikipedia(Pomade/阪本高生堂)、各ブランド公式、Shopify製品情報(成分)。本記事は整髪料の一般的な特徴をまとめたもので、効果には個人差・製品差があります。

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